離婚の基礎知識㉑ ~面接交流権について~
2018.02.021.面接交流権とは
面接交流権とは、離婚して、親権者あるいは監護者とならなかったために未成年の子供と別れて暮らすことになった父親、または母親が、子供に対して面接し交流(一緒に買い物や食事をする、旅行をする、寝泊まりする等)することを認める権利です。
離婚によって夫婦の関係は清算されても親子の関係は消えませんから、可愛い我が子と離れて暮らすことになった場合、親が子供に会いたいと思うのは親の自然な感情ですし、子供が親に会いたいと思うのも同じでしょう。
面接交流権とは、自然の感情に基づいた親としての、また子供としての当然の権利として認められているものです。
2.面会交流を求める方法
父母の離婚時に、子の監護すべき者、父または母と子供との面会及び交流、子供の監護に要する費用の分担その他の子供の監護について必要な事項は、その協議で定めることになっています。(民法766条第1項、771条)
〇協議
離婚前の夫婦別居時でも、離婚後でも、父母の合意があれば自由に子供との面会交流はできるので、まずは父母の話し合いで面会交流の可否・頻度・方法等について協議します。
〇調停
父母の協議が調わない場合や協議をすることが出来ない場合には、調停の利用が考えられます。
・申立権者:面会交流を求める子の父または母
・管轄裁判所:相手方の住所地を管轄するまたは当事者が合意で定める家裁
・申立書類:「子の監護に関する処分(面会交流)調停申立書」を提出。
〇審判
調停が不成立となった場合には、調停の申立ての時に審判の申し立てがあったものとみなされますので、自動的に審判手続きに移行します。
審判においては、裁判官が面会交流が認められるか否かの判断要素とされる内容を総合的に考慮したうえで、面会交流を認めるか否か、認める場合の頻度や方法等について判断しますので、面会交流を求める側としては、判断要素とされる内容について積極的に主張・立証していく必要があります。
最終的には、裁判官による審判が下されることになります。
3.面接交流権が認められるとき、認められないとき
「面接交流は親と子供の当然の権利」とはいっても、現実には無条件に、何の制限もなしに面接交流が認められるわけではありません。
親権や監護権と同様に、面接交流権もまず考えなければならないことは「子供の利益、子供の福祉」の為に必要であるかどうかです。そのため、親と面接することが子供に悪い影響を与えるような場合には、権利はあっても実際に面接交流することは認められません。例えば、片方の親がアルコール依存症であったり、子供に暴力を振るったりしていて、もう一方の親が子供を救うために子供を連れて離婚したような場合には、面接交流は当然認められません。
≪子供の利益と福祉に有益=面接交流が認められる≫
食事をしたり、遊びに行ったり、相談ごとをするなど、親子の円滑なコミュニケーションが子供にとって有益と判断される場合は面接交流が認められる。月1回程度、会っているケースが多い。
≪子供の利益と福祉に反する=面接交流は認められない≫
・親が薬物・アルコール依存症や精神的に不安定
・子供に暴力を振るう
・子供の心を動揺させたり、良くない影響を与える
・子供の方で会うことを拒否している。
・子供が連れ去られるおそれがある場合
4.面接交流を拒否できるか
正当な理由がないのに面接交流を拒否した場合には、損害賠償を請求される場合があります。(1回当たり数万円という例が多いようです。)
離婚時(調停調書作成時)に面会交流を拒否した場合、例えば「約束を破った場合1回につき5万円の違約金を支払う」という取り決めをしておく場合もあるようです。
子供が幼い場合には、実際に子供を養育監護している親の協力がないと事実上面会交流は叶いません。この協力がさせず子供に会わせてもらえない場合、不当に面会が拒否された側は焦ってしまいがちですが、きちんと手続きを踏む必要があります。
いくら相手が悪いからといって、順序を踏まないで無理やり会おうとすれば、違法とされ逆に会う権利を失ってしまう危険性まであるので、まずは裁判所に申し立てて履行勧告をしてもらい、それでもダメなら間接強制または損害賠償請求という流れを経る必要があります。
離婚成立前に相手が子供を連れて出て行ってしまい、それによって子供と引き離され子供にも会わせてくれないという場合がありますが、この場合は、まだ二人が共同で親権をもっているわけですから、なおのこと面会交流の必要は高く、権利として当然認めてられているので、家庭裁判所に対して面会交流の申し立てをすることができます。