離婚の基礎知識㉒ ~子の引き渡しについて~
2018.02.19【離婚に関連して子の引き渡しを求める場面】
離婚後に親権者として母又は父が養育していた子を親権者ではない父または母が連れ去ってしまった場合や、離婚前であっても父母の別居中における子の監護者をめぐる話し合いがまとまらず双方にて子の連れ去り行為が繰り返される場合があります。
このような場合に、父と母の離婚後または離婚前であっても、子の監護をめぐり、子の引き渡しを求める場面が生じます。
子の引き渡し請求について、明文の規定はありません。しかし、親権者・監護権者は、子の監護・養育する義務を負っており、その義務を全うするためには子を自己の支配下に置くことが必要であるので、親権や監護権に基づく子の引渡請求が認められるものです。
【家庭裁判所で子の引き渡しを求める方法】
①子の監護に関する処分(子の引渡し)調停・審判申立て
話し合いで合意が見いだせる可能性がある場合は調停を、話し合いで決着がつかない・話し合い自体が持てない場合は審判を家庭裁判所に申し立てます。
申立後の審理にあたっては、子の引き渡しにより、生活の場が変わることで子の健全な成長に悪影響を与えないか否か、子の福祉の観点から十分に留意されます。
また子の引き渡しにより、子自身の生活の場所が変更されてしまうので、子の意向も重要です。子の意向を把握するため、子が15歳以上であるときは陳述聴取を行い、子が15歳未満でも子の年齢や発育の程度に応じて、子に精神的な負担をかけることのないように十分配慮しながら子の陳述聴取ほか適切な方法を取り、子の意思を把握するように努められています。
審理の結果、子の引渡しの審判で申立てが認容され、その審判が確定すれば子の引渡しを求めることができます。この審判には強制力があると解釈されているので、強制執行することも可能となります。
なお、調停が成立すれば、調停調書が作成され、その調書の記載は確定した審判と同一の効力を有することになります。調停が不成立になった場合には、そのまま審判手続きに移行して審判がなされます。
②審判前の保全処分申立て
現状を放置していたのでは調停・審判による紛争の解決を図ることが困難になる場合には、審判を申し立てるのと同時に、正式な決定前の仮処分である「保全処分」を申請することにより、迅速な判断を求めることができます。
家庭裁判所は、申立人に子を引き渡すように命じる処分(保全処分)についての判断をすることになります。
【地方裁判所で子の引渡しを求める方法】
家庭裁判所による方法は、調停にしても審判にしても審判前の保全処分にしても、実際に結論が出るまでには半年程度はかかります。
そこで、最も迅速で強力な方法として、地方裁判所あるいは高等裁判所が管轄となって行う「人身保護法に基づく人身保護請求」という手続きがあります。
これは最短で2週間程度で決定が出ることもあります。
この「人身保護請求」は、監禁されるなどして身体の自由を不当に奪われている人を一刻も早く開放することを目的としており、非常に緊急度の高い場合に用いられるものです。子の引渡しの場面では、例えば、幼稚園の帰りに待ち伏せなどをして強引に連れ去ったなど拘束の開始時に違法性が認められる場合や、連れ去った子供を虐待しておりすぐさま取り戻さないと子供の福祉が損なわれるというような緊急性が高い場合のみ認められる傾向にあり、同請求は最終手段として用いられるものと位置付けられています。