離婚の基礎知識㉔ ~養育費について その2~
2018.04.10〇養育費の金額について
双方の協議により養育費を決める場合には、どのような金額でも問題はありません。
裁判所での養育費の算定にあっては、従来、色々な計算方式があり、各ケースに当てはめようとしてきましたが、それぞれの事情がそれぞれ違っているわけですから、客観的で双方が納得できる金額を出すのは難しく、審理が複雑化・長期化するという問題が生じていました。
そこで、平成15年4月に養育費の算定を簡易・迅速に可能にするために東京と大阪の裁判官が共同作成した「簡易迅速な養育費等の算定を目指して―養育費・婚姻費用の算定方法と算定表の提案」(以下「算定表」といいます。)が発表され、現在では、全ての裁判所において調停や裁判の際に広く活用されています。
この算定表は、
・養育費を支払う側(義務者)の年収
・受け取る側(権利者)の年収
・扶養する子供の人数・年齢
から、自動的に養育費の月額目安を導き出します。従って、「どのような費用がかかってきたか」や「どんな暮らしぶりか」などは考慮されません。
年収については、給与所得者と自営業者で当てはまる欄が異なります。
給与所得者の場合は、源泉徴収票の「支払総額」が年収にあたります。
自営業者は確定申告書の「課税される所得金額」に実際には支払っていない控除額(基礎控除など)を加えた額が年収になります。
算定表はあくまで目安ですから、裁判官がこれに当てはまらない金額の支払いを命じることはありますが、もともと表で示される養育費の金額には幅が取られているため、そこから逸脱する金額が示されるのは「特別な事情がある」場合に限られます。
(算定表は、当HP「リンク集」→静岡地方裁判所・静岡家庭裁判所→「サイト内検索」で「算定表」で検索すると表示されます。)
〇養育費の支払期間について
養育費の支払終期は、原則として子が満20歳に達するまでとされていますが、20歳以下でも稼働して経済的に自立している場合は除かれますし、養育費は子供の養育看護にかかる費用である以上、子供が成長して独り立ちするまでずっと必要になってくるものですから、大学へ進学する予定ならば22歳まで支払うという取り決めや審判もあります
大学進学の場合や病気になった場合などは「別途協議する」と取り決めておく例もあります。
〇養育費の支払方法について
養育費の支払いについては、子供の日々の生活需要に応えることを目的として子供を実際に監護している親に支給するものであるという養育費の性質上、定期金支払の方法(一定の期間、一定の金額を支払い続ける方法)によるべきであり、一括前払いの方法は認められないのが原則と考えられており、審判手続きにおいては、非監護者に対する一括請求は認められない傾向にあると考えてよいと思われます。
しかし、事情によっては、一括で受け取ることもやむを得ないと考えられる場合もあり、協議・調停段階においては、一方が一括払いの方法によることを希望し、他方がこれを受け入れて当事者間に合意が成立した場合には、この合意を有効として差し支えないとされています。
こういった一括払いの場合には、子供の将来を考えて、慎重に金額を決めなければなりません。将来にわたってかかる費用である以上、当然、月日の経過により、子供を取り巻く環境の変化も考えられるので、将来の紛争を予防するために、あらかじめ一括金を算定する際の月額や期間等の内訳を明示しておくなどの工夫が求められます。