離婚の基礎知識㉕ ~養育費について その3~
2018.04.20〇養育費の金額等の変更について
離婚の際に双方で合意した養育費の金額や支払いについては、きちんと尊重され守られるべきですから、養育費を変更してほしいと言っても無制限に許されるものではありません。裁判所も養育費の額、支払期限についてお互いの合意が成立した以上、簡単にその変更を認めるべきではないとしています。
そのうえで、合意の当時は予測することや前提とすることもできなかった事情の変更がある場合には、合意を変更できるとしています。
養育費変更の手続きは、
①親同士が協議して決める
↓(不調の場合)
②家庭裁判所に「養育費変更」の調停を申し立てる
↓(不調の場合)
③審判で養育費が決められる
という流れになります。
〇養育費を払ってもらえない場合・支払いに問題が生じた場合について
合意した養育費を払ってもらえない場合は、当事者自らが公証人役場に出向いて作成してもらった「公正証書」、調停で話し合われその合意によって決められた場合は家庭裁判所が作成してくれた「調停調書」、審判の場合は家庭裁判所が作成してくれた「審判書」、養育費を巡る争いが裁判に発展した場合、地方裁判所が作成してくれる「判決書」、「和解調書」を根拠に支払いを求めていくことになります。
協議離婚の場合は、養育費の支払い義務があると証明するために、合意内容を必ず「公正証書」にしておきましょう。
強制執行をしてもらうためには、養育費の支払いを怠っている相手の住所地を管轄する裁判所に対して差押えの申し立てをします。
差押えの対象となる財産は、具体的には不動産、債券、預金、給与などが中心になります。
相手が会社員などの給与所得者の場合「給与の差押え」が非常に有効で、給与額の50%まで差押えることができますし、平成16年の法改正で、養育費の支払いが滞った場合は「将来にわたる給与差押え」が認められるようになったので、いったん差押えが認められれば、その後も毎月、給与から天引きする形で養育費を受け取ることが可能になりました。
強制執行をしてもらうためには、債務者の財産を探したり、とても煩雑な手続きをしなければならず、法的な技術が必要となるので、弁護士を代理人に立てることをお勧めします。
弁護士については、当HP「弁護士紹介」ページに当所がお勧めする弁護士先生を掲載していますので、ご覧ください。
〇家庭裁判所の「履行命令」や「履行勧告」
相手が調停・審判で決められた養育費を払わない場合は、裁判所に申し立てて「履行勧告」や「履行命令」を出してもらう手段もあります。
「履行勧告」には強制力がありませんし、「履行命令」も違反すると10万円以下の罰金がありますが、直接お金を受け取れるわけではありません。
しかし、裁判所からの勧告・命令であることから、支払いをしない相手にある程度の心理的強制力を与える効果はあり、強制執行という手段を取る前の段階として利用する価値はあるでしょう。
〇養育費を放棄した合意について
妻が離婚したい一心で「離婚さえしてくれれば、今後一切養育費の支払いは請求しない」と夫に約束してしまうことが多々あるようです。
この夫婦の間で養育費を請求しないという合意は、後になって無効にできるかどうかということですが、養育監護している親からの請求は、離婚時の合意(養育費を放棄している)が最優先されるので、認められるのは難しいでしょう。
しかし、養育監護されている「子供から親に対する請求」については、子供は親に扶養される当然の権利があり、子供自身が持っている親に対する扶養の請求権は、母親と父親の取り決めがどうであろうと失われることはありませんから、子供から請求することは可能です。