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離婚の基礎知識㉖ ~離婚後の姓・戸籍について~

2018.05.22

 日本では、夫婦同姓の原則が取られているため、結婚によって、どちらか一方の姓が変わることになります。
 では、結婚によって姓が変わった場合、離婚によって姓はどうなるのかということですが、民法第767条で「原則として旧姓に戻ること」とされているので、結婚前の姓に戻したいという場合は、特別な手続きは不要です。
 しかし、結婚期間が長く婚姻期間中の姓に慣れているという理由や、職場で呼称を変えることは何かと不便なうえ離婚の事実を公表することにもなり大きな抵抗があるとの理由などで「姓を変更したくない」場合は、離婚後も婚姻中の姓を使い続けるために「離婚の際に称していた氏を称する届」を出さなければなりません。(同条第2項)
 この届は、離婚の日から3カ月以内に役所に提出しなければならないとされていますが、通常は離婚届と一緒に提出してしまう人が多いようです。
 この「離婚の際に称していた氏を称する届」は、婚姻中の姓を使い続けたい本人だけの署名押印で十分です。また、離婚後も婚姻中の姓を使い続けたいということについては、特に理由を問われることはありません。つまり、夫や妻が離婚後にどちらの姓を使うかについては、そのパートナーは口出しすることができないということです。

 結婚によって姓を変えなかった側は、離婚後も婚姻中の戸籍にとどまることになります。
 一方、結婚で姓を変えた側は、離婚時に「離婚の際に称していた氏を称する届」を提出しているかどうかによって、戸籍が異なってきます。
 この届をしている場合には、原則として新しい戸籍が作成され、その新しい戸籍に入ることになります。
 そうでなく、この届をしていない場合は、結婚前の戸籍に戻るか、単独の新戸籍を作ることになります。

・独身時代の夫の戸籍
(筆頭者)静岡〇〇、(妻)静岡〇〇、(長男)静岡太郎


・独身時代の妻の戸籍
(筆頭者)愛知△△、(妻)愛知△△、(長女)愛知花子


・結婚時代の夫婦の戸籍
(筆頭者)静岡太郎、(妻)静岡花子、(長男)静岡次郎
妻も夫も、自分の父を筆頭者とする戸籍から出て、夫を筆頭者とする戸籍を新しく作り、夫婦の間に生まれた子供もこの戸籍に入る。


☆離婚後の姓と戸籍の選択
①旧姓に戻り、実家(結婚前)の戸籍に戻る。 【筆頭者:愛知△△】
②旧姓に戻り、自分で新しく戸籍を作る。   【筆頭者:愛知花子】
③結婚時の姓を継続使用し、新しく戸籍を作る。【筆頭者:静岡花子】
※子供は原則として結婚時の戸籍に残る。【筆頭者:静岡太郎、(長男)静岡次郎】
※子供を自分の戸籍に入れるためには、自分で新しく戸籍を作らなければならないため、旧姓に戻る場合も実家の戸籍には戻れない。

        

 子どもの姓について、法律では民法第790条第1項で、子供の氏は結婚時の父母の氏を称するとしていますから、夫婦の間に生まれた子供は、両親が離婚しても、基本的には結婚した時に夫婦が選択した姓を名乗ることになります。また、戸籍も結婚時の筆頭者の戸籍に残ります。
 子供は原則として、結婚時の夫婦の戸籍に残りますから、結婚して姓を変えた人は、離婚してその戸籍から出ると、子供は姓も戸籍も異なってしまいます。これは、離婚するときに結婚時の姓を続けて使用するにしても同じです。
 例えば、静岡太郎と結婚して「愛知」という姓を「静岡」という姓に変えた花子の場合、離婚をすれば、静岡太郎を筆頭者とする戸籍から出ます。このとき子供は、筆頭者であり父親でもある静岡太郎の戸籍に残り、母と子供の戸籍は異なることになります。花子が旧姓(愛知)に戻ればもちろんのこと、例え「静岡」姓を続けて名乗るにしても、子供が名乗る「静岡」姓と、母の戸籍上の「静岡」姓は別姓とされるので、法律的には姓も異なるのです。
 母親と子供が同じ戸籍に入るためには、子供の住所地を管轄する家庭裁判所に「子の氏の変更許可申立書」を提出し、子供の姓を母親と同じものに変更することについて、家庭裁判所の許可を得る必要があります。
 申し立て後、家庭裁判所から許可が下りたら、最寄りの市町村役場に「入籍届」を提出します。
 このような手続きを経て、母親と子供は、法律的にも同じ性を名乗り、同じ戸籍に入ることができるのです。
 15歳以上であれば、子供が自分で姓の変更を申し立てることもできますが、15歳未満の場合は、本人に代わって、親権者となった親が法定代理人として申し立てなければなりません。
 なお、子供が成人して、再び父の戸籍上の姓に戻りたいと望んだ場合は、役所の戸籍係に届け出るだけで戻ることができます。また子供が自分を筆頭とした新しい戸籍を作ることもできます。

結婚時の戸籍:

(筆頭者)静岡太郎、(妻)静岡花子、(長男)静岡 次郎

 離婚↓
   ↓

☆元の姓に戻る場合
(筆頭者)静岡太郎、(長男)静岡 次郎
(筆頭者)愛知花子 

☆離婚後もその姓を続けて名乗る場合
(筆頭者)静岡太郎、(長男)静岡 次郎
(筆頭者)静岡花子

   ↓

①子供の姓を変更する
「子の氏の変更許可申立書」を提出する

   ↓

 家庭裁判所の許可

   ↓

②子供を自分と同じ戸籍に入れる(最寄りの市町村役場で「入籍届」を提出)

   ↓

☆元の姓の場合
(筆頭者)静岡太郎、
(筆頭者)愛知花子 (長男)愛知次郎

☆離婚後もその姓を続けて名乗る場合
(筆頭者)静岡太郎、
(筆頭者)静岡花子(長男)静岡次郎



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