離婚の基礎知識⑥ ~調停離婚~
2017.03.14夫婦の話し合いでは離婚の合意ができず協議離婚が成立しなかったときや、相手が話し合いにすら応じなかった時は、調停前置主義があるので、いきなり離婚訴訟を提起することはできません。家庭裁判所に「離婚調停」を申し立てる必要があります。
この「離婚調停」とは、家庭裁判所という第三者が仲裁して離婚のための話し合いを続けるもの、夫婦の意見をまとめることを目的に行われるものです。
具体的には、夫婦が直接話し合うわけではなく、調停委員会(裁判官と調停委員2名)が間に入って、夫婦が持ち寄ったそれぞれの言い分をもとに、お互いにきちんと納得できるような合意点を探っていくのです。
この離婚調停で、離婚についての合意が成立し、調停調書にその旨の記載がなされれば離婚が成立します。これを「調停離婚」といいます。
~調停前置主義とは~
家事事件に関する事件については、公開の法廷で争うより、可能な限り話し合いで円満に解決することが望ましいという考えに基づき、家事事件手続法第257条第1項において「調停を行うことができる事件について訴えを提起しようとする者は、まず家庭裁判所に調停の申し立てをしなければならない」と規定されている。
【離婚調停申し立ての方法】
離婚調停を申し立てるには、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所または夫婦が合意で定めた家庭裁判所に「夫婦関係等調整(離婚)調停申立書」を提出して申し立てます。
なお、申し立ての際には、夫婦の「戸籍謄本(全部事項証明)」各一通と、収入印紙1,200円分、連絡用の郵便切手が必要になります。
「調停申立書」に記載する事項としては、
①同居開始時期、別居開始時期、子供の有無など、当事者に関わる事実
②申立ての趣旨、理由
③未成年者がいる場合の親権に関する事項
④未成年者がいる場合の面会交流に関する事項
⑤未成年者がいる場合の養育費に関する事項
⑥財産分与に関する事項
⑦慰謝料に関する事項
⑧年金分割に関する事項
⑨その他の事項
などがあります。
「申立ての趣旨」には、「申立人と相手方は離婚するとの調停を求める。」と記載し、必要に応じて親権者、養育費、財産分与など付随的申立てについても記載します。
「申立ての理由」欄には、夫婦関係が不和となった事情、そのいきさつなどを簡潔に記載します。
【調停の進行】
調停の申し立てが受理されると、その後「調停期日の指定」と「呼出状」が申立人と相手方に送られ、指定された日時に行われることとなります。
調停の期日には、裁判官1名と調停委員2名が「家事調停委員会」を構成して、非公開方式で調停を進めていきます。
申立人と相手が直接話し合うわけではなく、通常は男女1名ずつが担当している調停委員が、夫婦のそれぞれを一人ずつ交互に調停室に呼んで、事情を聞きながら夫婦がお互いに合意できる点を探っていきます。
調停が何回開かれるかは事案によりますが、全く合意の可能性がない場合や逆に争いがない場合には1~2回程度、争いはあるものの合意の可能性がある場合は5回~6回程度、場合によってはそれ以上の回数の期日が開かれます。
調停期日の間隔については、概ね1カ月から2カ月程度なので、調停開始から結論が出るまでには数カ月かかります。
【調停と離婚原因】
調停は話し合いの場なので、法律上の離婚理由(民法770条による離婚原因)があるかどうかは直接影響しません。
自ら不貞行為をした場合であっても一概に却下されるのではなく家事調停として受け付けられ、夫婦双方の意思を尊重しつつ調停が進められます。
【離婚調停が不成立】
調停の呼び出しには強制力はありませんから、呼び出しをかけても相手が来ないこともあります。
相手が出頭しなかったり、どうしても夫婦で意見の調整ができずに合意の道が見いだせずこれ以上調停を繰り返しても意味がないと裁判所が判断した場合には、調停不成立となり終了します。
この場合には、離婚裁判を提起して、裁判での離婚を目指していくことになります。
【離婚調停が成立】
調停を何度か繰り返し、夫婦ともに離婚の意思が固まって金銭的なことや親権の問題などについての合意点が見いだせたら、その離婚の合意が調停合意として成立します。
調停離婚では、離婚届を提出した日や受理した日に関係なく、この離婚の合意が見出された調停期日が離婚が成立した日ということになります。
調停が成立すると、調停での合意内容が記載された「調停調書」が作成されます。
この調停調書は判決と同じ効力があり、慰謝料や養育費、財産分与などについて、調停で合意された約束が守らなければ強制執行ができます。
調停で離婚が成立したからといっても、戸籍上は離婚したことにはならないため、調停の成立後10日以内に、調停の申立人が夫婦の本籍地または住所地の市町村役場の戸籍係に調停調書の謄本を添付して離婚届を提出する必要があります。