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離婚の基礎知識⑨ ~裁判離婚 その2~(法定の離婚原因)

2017.06.12

 裁判で離婚を争うには、民法第770条に規定する「離婚原因」が必要になります。

 裁判にまで至った場合は、相手が離婚に同意していなくても、民法で定める「離婚原因」があれば離婚は成立します。

 つまり、夫婦それぞれの気持ちが食い違っている場合には、離婚原因があるといえるかどうかで、離婚が成立するかどうかが決まってくるということです。

【民法第770条第1項】

 夫婦の一方は次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

 1. 配偶者に不貞な行為があったとき。

 2. 配偶者から悪意で遺棄されたとき。

 3. 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。

 4. 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。

 5. その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

        

 上記離婚原因について、それぞれ詳しく説明します。

 1.配偶者に不貞な行為があったとき。

 配偶者に不貞行為があったときです。不貞行為とは

 「自由な意思に基づいて、配偶者以外の異性と性的関係を結ぶこと」

を言います。(詳しくは、2017年2月3日投稿の「離婚の基礎知識➀~不貞行為~」をご覧ください。)

2. 配偶者から悪意で遺棄されたとき。

 悪意とは、遺棄すればうまくやっていけなくなることを知っているだけでなく、そうなっても構わないという不誠実な心理、態度のことを言います。

 民法752条では、「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」義務を定めていますが、「悪意の遺棄」とは、正当な理由がないのに、夫婦が負っている同居義務や協力義務などを行わないことを意味します。

 悪意の遺棄の具体例を挙げると、

 ・生活費を渡さない

 ・夫が働かない

 ・一方的な理由で実家に戻ったり別居したりする。ただし、それ相応の理由(夫の暴力など)があれば、悪意の遺棄に当たらない場合もある。

3. 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。

 3年以上にわたり、パートナーが生きているのか死んでいるのか確認できない状況が現在まで続いていることを言います。生死不明となるに至った原因の内容は問いませんが、単に行方不明だけでは足りず、生存の証明も死亡の証明も立たないことが必要です。

 相手がいない以上、協議離婚、離婚調停はできないので、調停前置主義の例外として、協議・調停という段取りを踏まなくても訴訟を提起することができ、行方不明の状況を明らかにしたうえで、訴状は相手に送られたものとみなして、裁判を開始することができます。

4. 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。

 パートナーが重度の精神障害にかかって、夫婦の互いの協力義務を十分に果たせないような場合を言います。

 うつ病になったという程度では、通常は離婚原因として認められません。相当な重度の精神障害の場合と考えた方が良いでしょう。

 同様に回復が難しく、結婚生活に大きな影響を及ぼす事態には、植物状態やアルツハイマー病、重度の身体障害など、色々な疾病が考えられます。また、アルコール中毒や薬物中毒、ヒステリー、神経衰弱など、この号に示す精神疾患には含まれないとされている病気でも、しばしば家庭を崩壊させる原因となっていることがあります。このような4号にあたらない疾病や心身の状態を、法定離婚原因として訴訟を提起するには、次の5号の「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。」として扱われることもあります。

5. その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

 ➀から④の具体的な離婚原因にあたらない場合でも、ケースバイケースで判断して、婚姻関係が破綻して回復の見込みがない場合に、離婚が認められるというものです。

 家庭裁判所で離婚訴訟が行われる場合で一番多い理由が、この「婚姻を継続し難い重大な事由」のようです。

  この「⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。」については、次回、具体例などを挙げながら詳しくご説明します。



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