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離婚の基礎知識⑩ ~離婚裁判 その3~(その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。)

2017.06.30

 民法第770条第1項に規定されている「離婚原因」について、1号から4号は前回の投稿でご説明したように客観的に判断が可能な原因であり、「さすがにこうなってしまったら離婚は仕方ないだろう」と判断されるものが挙げられていますが、これに対して5号は

 「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。」

と極めて抽象的な記載となっており、何がそれにあたるのか明確に規定されていません。

 離婚に至る原因は夫婦ごとに千差万別ですから、それぞれの特殊な事情を広く判断の材料とし、裁判で離婚を認める理由の足掛かりとなる条文が、この5号なのです。

 言い換えれば、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。」とは、1号から4号には当てはまらないけれども、これに匹敵するような結婚が続けられない深刻な事態を指していると言えるのです。

 離婚が認められるかどうか微妙な事案の大半がこの5号にあたるかどうかで争われているようです。

        

・性格の不一致

 性格の不一致や生活観、人生観、価値観などの相違は、多かれ少なかれどの夫婦にもみられることですが、それらが原因で、夫婦間のいさかいが繰り返され、もはや結婚生活が円満に営まれない、結婚生活の維持が困難と判断されるような場合には離婚が認められると考えて良いでしょう。

 夫婦ともに、もう少し寛大な心で結婚生活を円満にする努力が必要と判断された場合は、離婚の訴えは認められません。

・暴力行為・虐待

 日常的に暴力行為が繰り返され、結婚生活が破綻し、回復の余地もないと認められる場合は、離婚が認められます。

 ただし、行為の裏にある精神的な病や暴行などを引き起こす夫婦間の問題はないかを考慮する必要があります。

・生活態度、ギャンブル、金銭トラブル

 定職につかない、ギャンブルにおぼれ生活費を入れない、サラ金から多額の借金を繰り返すなどで結婚生活の破綻が認められる場合は、離婚が認められます。

 ただし、その行為の裏にある原因について考慮する必要性があります。

・宗教上の問題

 相手の宗教や信仰が直ちに離婚原因となることはありませんが、その宗教活動に一方がどうしても耐えられない場合や、家庭生活の崩壊を招いている場合は認められることがあります。

・性的問題

 異常な性関係を継続して強要することや性交渉が全くなく結婚生活の継続が難しい場合には離婚が認めらます。単なる性の不一致というだけで認められるのは困難です。

 性交不能の場合は、その発生時期・原因・態様などについて、医学的または精神的な専門家の慎重な診断を要することは当然とはいえ、婚姻を継続し難い重大な事由に該当するとされています。

 夫婦間の合意、健康問題などの正当な理由がないにもかかわらず、一方の配偶者が長期間にわたり性交渉を拒否することは、「婚姻を継続し難い重大な事由」があると判断されます。

・嫁姑問題、その他の親族との確執

 嫁姑の確執をはじめ親族との確執は、それが直ちに事由として認められるわけではありません。ただし、配偶者がその不仲を傍観し親族に同調していた場合など、夫婦間ではもはや結婚生活が破綻し、解決の可能性がないと判断される場合には、離婚が認められます。

・犯罪行為

 一方の配偶者が刑事事件を起こした結果、他方配偶者に婚姻継続の意思がなくなった場合は、刑事事件を起こしたことは、その者の反社会的・反倫理的な性格を表わすものといえ、夫婦間の信頼関係を維持することは困難といえるので、「婚姻を継続し難い重大な事由」があるとして離婚が認められると考えられます。

・重大な病気や障害がある場合

 重度の疾患に配偶者が冒され、もはや回復の見込みがないと判断された場合や、献身的な介護を続けてきたもう一方の配偶者に、これ以上の負担は強いられないと判断された場合には離婚が認められます。

 ただし、病気の配偶者に対して、一方の配偶者に協力や誠意がみられないと判断された場合には、離婚の訴えは認められないことがあります。



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