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離婚の基礎知識⑪ ~有責配偶者からの離婚請求は認められるか~

2017.07.08

 裁判で離婚を争うには、民法第770条に規定する「離婚原因」が必要だということは、これまでご説明してきましたが、「離婚原因」を考えるにあたって、忘れてはならない重大な問題があります。

 それは、「離婚の原因を作った配偶者(有責配偶者)からの離婚請求は認められるか」という問題です。  

       

 有責配偶者からの離婚請求は「婚姻関係の破綻を招いた者が、離婚を請求するのは勝手過ぎるでしょ」という考え方から、民法制定以来、長い間認められていませんでしたが、家庭裁判所や地方裁判所の裁判では、有責行為の実態と婚姻関係破綻との因果関係、その後の夫婦関係の実態、別居の有無とその期間などの諸事情を考慮し、有責配偶者からの離婚請求であっても場合によっては認めるという判決が出始め、ついに昭和62年9月最高裁は従来の判決を変更し、「夫婦の別居期間が、両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長きに及んでおり、夫婦に未成熟の子供がいないような場合には、離婚により相手配偶者が、精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状況に置かれるなど、離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情がない」ことを条件に、有責配偶者からの離婚請求を認める判決を下しました。

 この判決が出てから、判決の流れは、有責配偶者からの離婚請求でも、諸事情を考慮し信義則違反といえない場合には離婚を認めるようになってきました。

            

  有責配偶者からの離婚請求では、別居の期間が一番大きな要素と注目されているようですが、夫婦の年齢、婚姻年数、同居期間との比較において別居が相当の長期間に及んでいる場合には、破綻が一応認められるとされますが、7年で十分とされた事案もあれば、11年でもまだ長期間とはいえないとされた事案もあり、数字的な期間のみで明確に決められる基準はありません。

 他方配偶者の責任の度合いや、離婚給付に関する有責配偶者の態度など、別居期間だけではなく様々な諸事情が重要な要素としてあげられているため、それら具体的事情を検討したうえで離婚の可否が判断されています。

≪有責配偶者からの離婚請求で考慮される諸事情≫

①    不貞行為の時期と程度はどうか

②    不貞行為と結婚生活が破綻したこととの前後関係はどうか

③    相手配偶者に結婚を続ける意思があるかどうか

④    相手配偶者は有責配偶者に対してどんな感情を持っているか

⑤    夫婦間に未成年の子供はいるか、その養育状態はどうか

⑥    別居後の生活状態はどうか

⑦    時を経て、事情や社会的評価にどのような変化が生じたか

⑧    離婚を認めた場合、相手配偶者はどのような状況に陥るか

 これらの諸事情に、夫婦の年齢、結婚期間の長さに対しての別居期間、別居期間中の婚姻費用の分担の度合い、子供の心情、家庭の経済事情などを合わせて総合的に判断される。



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