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離婚の基礎知識⑫ ~婚姻費用~

2017.07.23

 「婚姻費用」とは、夫婦が生活するために必要な費用、いわゆる生活費で、衣食住の費用や水道光熱費、子供の養育費、医療費などです。

  婚姻関係にある夫婦は同居義務とともに扶助義務を負っており、民法760条で「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する」と規定され、婚姻関係にある夫婦間の婚姻費用の分担義務が定められています。

 この婚姻費用は、夫婦が一緒に生活している場合には問題となることが少ないのですが、離婚に向けた協議が始まり、どちらかが家を出て別居している状態や、同居はしていても収入のある方が生活費を渡さないというときに問題になります。

 例えば、夫が会社で働き妻が専業主婦をしている家庭の場合や、共働きの家庭でも夫と妻の収入に大きな差がある場合は、夫の収入を妻に渡さなければ、妻は生活が困難になるおそれがあります。

 生活費を渡していた夫が離婚請求した場合、一方的に別居したうえで妻が離婚に応じるまでは一切生活費を渡さないということにでもなれば、妻は不利な条件で離婚せざるをえない状況に追い込まれてしまいます。

 このような場合に、妻が夫に対して、婚姻費用の分担を求めるということで、一定の金額を請求することになるのです。

               

 婚姻費用は、離婚が成立すると支払われる財産分与や慰謝料とは違い、離婚が成立すると婚姻関係は解消されてしまうので、婚姻費用は請求できなくなります。

 一般的には離婚の話し合いを始めてから離婚が成立するまでの間に、相手や子供の生活を維持するために支払われるものなので、別居中の夫婦の間で、離婚の協議や調停が始まった場合には、財産分与や慰謝料の話をする前に、婚姻費用の金額を決めるための話し合いをすることが大切です。

 婚姻費用の金額については、裁判所が定めた算定表に基づき決められます。

 婚姻費用算定表のしくみは、子供の人数・年齢に対応した算定表の中で、夫と妻の年収が交差するところが、支払うべき婚姻費用額となります。

 婚姻費用については、まず、夫婦で協議することになります。

 ここで合意できれば良いのですが、どちらかが既に家を出て別居していたり、話し合いに応じないなど協議でまとまらない場合は、家庭裁判所に婚姻費用の分担を請求する調停を申し立てます。

 判例では、別居後に婚姻費用を分担しなくなった夫に対して、別居時からではなく、調停申立時から婚姻費用を支払うよう命じる判決が出ているので、婚姻費用について夫婦間の話し合いが長引くようなら、速やかに調停を申し立てた方が望ましいといえます。

 調停では、婚姻費用算定表を基準に婚姻費用額が検討され、調停員の説明を受けて合意に至ることが多いといえます。

 調停で出された婚姻費用額で合意ができない場合は、自動的に審判に移行し、審判で婚姻費用が決められることになります。

 ・婚姻費用分担請求の調停申立書

 ・夫婦の戸籍謄本1通

 ・申し立て費用(収入印紙1200円分)

 ・切手代(家庭裁判所によって金額が設定されている。1000円分程度)



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