離婚の基礎知識⑬ ~慰謝料について その1~(慰謝料が請求できるケースなど)
2017.08.21【慰謝料とは】
故意、または過失による不法な行為により、損害を受けた者が行為者に請求するものを損害賠償といいますが、「慰謝料」とは、この損害賠償の中でも特に精神的苦痛に対する代償として求めるものです。
離婚の慰謝料とは、離婚の原因となった不貞行為などの不法行為によって、精神的苦痛を受けた配偶者が、この行為を働いた相手配偶者に対して求める損害賠償金(離婚原因に基づく慰謝料)であるとともに、離婚で配偶者としての地位を喪失することからくる精神的苦痛に対する損害賠償金(離婚そのものの慰謝料)でもあります。
このように「離婚の慰謝料」には、二つの意味があると考えられており、分かり易く言えば、夫婦のどちらか一方が浮気をしたり、暴力を振るったりしたことで、パートナーに精神的につらい思いをさせてしまったことに対する償いという意味と、婚姻関係が壊れてしまい、夫や妻という配偶者としての立場を失ってしまうことによって受ける精神的な苦痛に対する償いという意味です。
【慰謝料が認められる場合と認められない場合】
離婚をするとき、いつも必ず慰謝料が支払われるかというと、そうではありません。
慰謝料が認められるのは、不貞行為、暴力行為、生活費を渡さない(生活保持義務違反)等、明らかに不法行為といえる原因があり、そこに破綻に至る責任がはっきりと認められる場合です。
≪慰謝料を請求できるケース≫
① 不貞行為
不貞行為は、裁判で離婚できる「離婚原因」の一つに挙げられており、結婚しているにも関わらず浮気をすればパートナーはつらい想いをするのは当然と考えられるから。
不貞行為は、二人で行うものなので「共同不法行為」とされ、不貞行為に基づく慰謝料は、浮気をしたパートナーに対してだけでなく、その浮気相手に対しても同時に請求することができます。
どちらか一方から慰謝料の全額が支払われた場合には、もう一方に二重に請求することはできません。
② 暴力行為
精神的苦痛に加え、体が傷つけられるなど肉体的苦痛が生じるのですが、それを証明できる診断書などの証拠があれば、慰謝料を請求することができます。
③ 婚姻関係の形成や維持に非協力的な行為
飲酒やギャンブルなどの浪費も「度を越えた」といえるようなものであれば、慰謝料が認められます。
④ 生活費を渡さない
裁判で離婚が認められる「離婚原因」の一つである「悪意の遺棄」にあたり、慰謝料が認められます。
⑤ セックスレス
性交渉は夫婦の生活の重要な要素ですが、性交渉がないことだけを理由とする慰謝料請求は難しいようです。
慰謝料が認められるためには、相手が性交不能であることを隠していたとか、性交渉を再三求めたのに応じてくれないといった要素も必要だと考えられています。
≪慰謝料が認められないケース≫
・破綻原因となった行為に不法性がない場合
例えば、離婚の原因が価値観の違いである場合。(自分と違う価値観を持つことは不法ではなく、これによって相手を責めることはできない。)
・性格の不一致
どちらか一方が慰謝料を支払うほどの精神的苦痛を与えたとは認められず、 慰謝料は請求できないことがほとんどです。
・相手に有責性がない場合
・双方に有責性がある場合
・有責行為と破綻原因の間に因果関係が認められない場合
・既に損害が補填されている場合
【慰謝料請求権の消滅時効】
慰謝料請求権の時効は「加害者及び損害を知ったとき」から3年であり、不貞行為など離婚に至る原因行為についての慰謝料を請求するのか、離婚自体の慰謝料を請求するのかで、起算点が変わってきます。
・不倫など離婚に至る原因行為についての慰謝料請求
第三者との不倫を知ったときから3年
・離婚自体の慰謝料請求
離婚が成立してから3年