離婚の基礎知識⑮ ~慰謝料について その3~(慰謝料の請求方法、支払い)
2017.09.27【慰謝料の請求方法】
すでに離婚に向けて動いている場合には、離婚の協議や調停・訴訟と併せて慰謝料を請求するのが一般的です。
協議離婚したが、慰謝料については話し合いがつかない場合は、慰謝料請求調停のみを単独で申し立てることもできます。
≪離婚後に慰謝料請求のみを行った場合の手続き≫
①申立権者
離婚した元夫または元妻
②申立書類
慰謝料請求調停の申立ては、管轄の裁判所に「慰謝料請求調停申立書」を提出して行います。
③管轄裁判所
相手方の所在地を管轄する家庭裁判所または当事者が合意で定める家庭裁判所です。
④申立費用
申立費用は1,200円で、収入印紙で納付します。
予納郵便切手が必要となりますが、その額は申し立てを行う裁判所に確認して下さい。
一方、離婚はしないで、パートナーの浮気相手にのみ慰謝料を請求したい場合は、独立した請求となりますが、裁判所に訴えるときは、地方裁判所に訴訟を提起することになります。
どのような手続きをとるにせよ、慰謝料を請求するには、その裏付けとなる証拠が必要です。
不貞行為に基づく慰謝料を請求する場合にどのような証拠が必要になるのかは、当HPお知らせ「離婚の基礎知識②~不貞行為を立証する証拠~」(2017.2.10) に詳しくご説明しましたので、そちらをご覧ください。
【慰謝料の支払い】
慰謝料の支払いは、通常「現金一括払い」とされていますが、支払う方に財産がなく、分割払いになる場合は、できるだけ初回支払い分はある程度まとめて受け取り、短期間の分割で終わるようにしたいものです。
これは、夫婦関係が清算された後に、分割金の支払義務が残ってしまうのは、支払う方も受け取る方にとっても気持ちのいいものではないことや、年数が経つうちに事情が変わり、将来的に支払われなくなるかもしれないというリスクがあるからです。
分割での支払いとなる場合は、「公正証書」を作成しておく、または調停を利用して調停調書を作成しておくことが大切です。
公正証書とすれば、不払いが発生した際に即座に裁判所を利用して相手方の給料を差し押さえるなど強制執行することが可能です。
調停成立後の支払いがない時は、家庭裁判所が義務の履行状況を調査し、慰謝料支払義務者に対してその義務の履行を勧告することができる「履行勧告」という制度や「履行命令」という制度があり、調停調書にも公正証書と同じように強制執行力があるのです。
≪慰謝料請求のためのポイント≫
① 証拠を揃えておく
・不貞行為の場合は、ラブホテルへの出入り写真・動画など。
・DVの場合、相手に暴力を振るわれた怪我をした時の「診断書」など。
・精神的・肉体的苦痛を受けた日記も証拠になる。
② 口約束はダメ
協議で決めた内容は必ず「離婚協議書」または「公正証書」などの書面にしておく。(調停離婚の場合は「調停調書」、裁判離婚の場合は「判決書」がこれにあたる。)
③ 一括払いが理想。分割払いは注意が必要
協議離婚の場合は、公正証書を作成し、約束が履行されない場合には強制執行が行われることを承諾する内容を記載する。
調停離婚の場合は、調停調書がこれにあたる。
なお、念書には公正証書などのような強制力はない。